なぜ、わざわざ文章など書くのか。
みなが見ていること、みなが感じていることを、見ないため、感じないためだ。感性のマイノリティーになることが、文章を書くことの本質だ。
心からの尊敬も、かたちにしなければ、言葉にしなければ、伝わらない。
言葉にならない感情、言葉に落とせない思想は、存在しない。言葉にならないのではない。はなから感じていないし、考えてさえいないのだ。
この本の主張の、根幹であり、要諦であり、最初で最後だ。
なにもかもなくしてみる。
世間を、流行を、自分をも、なくしてみる。
なにもかも、なくして、さてそこで、まだなにか言いたいことは、あるだろうか。なにかを考えられるか。なにかを感じられただろうか。
書くのは、そこからだ。文章を書くとは、無から有を生みだす魔術のことである。
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